見慣れた風景も逆から見れば
まったく異なった雰囲気となる
オーストリアと国境を接し
アルプスの南麓に広がる村々
イタリアのドロミテ街道は新鮮だ
写真・文 北奥耕一郎
ここだ!
ミラノ、ヴェローナを経由してボルツァーノからバスで走ってきた私たちの眼前に、探していた風景が広がった。毎年私が実施している撮影ツアーで北イタリアへやって来たのだが、実はこの写真の場所がわからなかった。しかし、25年も写真の仕事をしていると地図と写真だけで撮影場所を探し当てることができる。
ここはドロミテ街道へ入ってすぐの脇道をしばらく走ったところにある村で、下方に見えている建物のそばでバスを降り、この位置までツアー参加者全員でがんばって登った。それだけに陽光を浴びて輝く紅葉が写せた時の喜びは大きかった。
さらに奥にある最高標高のポルドイ峠を通ってコンティナ・ダンペッツォまで街道は続くが、次第に落葉樹がなくなるので「秋の色」が写せなくなる。垂直に切り立ったドロミテ特有の山の光景も迫力がある。しかし紙面などで紹介するには季節感あふれる写真がいい。この村に立ち寄ってよかった。
反対側にあるチロルとの最大の違いは観光客が少ないこと。ルートから外れたこの小さな村に大型バスで乗りつけたのは、私たちがはじめてのようで、村人たちは驚いていた。カフェでビールを飲んだが、彼らはみな素朴で親切だった。かってはスイスもこうであったろう。
窓を花で飾った小さなホテルが数軒あった。この村のホテルに泊まればよかった。たとえ近代的設備は欠けていたとしても人情味にあふれ、心が癒されたに違いない。
これからはそのような旅に人気が出るような気がする。
(情報誌フルフル第1号より転載)
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